東日本大震災のあとに作った防災リュックが、玄関に近い和室に置いてあります。
中身は、これまで何度か入れ替えてきました。でも先日、久しぶりに持ち上げてみたら、思ったより重い。開けたところで、手が止まりました。
「これを持って、どこへ行くんだろう」
中身を見直すより先に、考えることがありました。
わが家は逃げるのか、家にいるのか
防災の記事を読むと、リュックに入れるものが20個も30個も並んでいます。でも、それを持ってどこへ行くのかは、あまり書かれていません。
そこで、わが家の条件を並べてみました。
- 高台にある(津波も、浸水も、土砂災害の区域でもない)
- 築20年(2000年からの、いちばん新しい耐震基準で建っている)
- 近くに避難所(公民館)がある。場所も知っている
並べてみて、はっきりしました。地震が来ても、家が壊れていなければ、わが家はたぶん家にいます。
体育館や公民館には、大勢の人が集まります。床は硬く、トイレの数も限られると聞きます。家が無事なら、家で過ごすほうが体はラクです。これを「在宅避難」と呼ぶのだと、あとから知りました。
もちろん、家が危ないなら迷わず避難所です。家が傾いていないか、壁に大きなひびはないか、ガスのにおいはしないか。それを確かめてから決めます。
逃げるのは、火事のときだけでした
では、家を飛び出す場面はないのかというと、ひとつだけありました。火事です。
火事は、数分で家を出ることになります。そして一度出たら、戻れません。
つまり、わが家の防災リュックは「火事のときだけ背負うもの」だったのです。そう気づいたら、中に水と食べ物をぎっしり詰めていた理由が、急に分からなくなりました。
リュック1つに詰めるのを、やめました
これまでは「防災=リュック1つ」だと思っていました。でも、逃げるか家にいるかで分けて考えたら、置き場所が3つになりました。
| 置き場所 | 使う場面 |
|---|---|
| ① 枕元(寝室) | 夜中の地震。停電で真っ暗、床にガラス |
| ② リュック(玄関に近い和室) | 火事。数分で家を出る |
| ③ 家の備蓄(台所横の備蓄スペース) | 地震のあと、家で過ごす3日〜1週間 |
備蓄スペースというのは、台所の横にある3畳ほどの部屋のことです。飲み物やインスタント食品のストック、ごみ袋やラップなどの日用品も、まとめてここに置いています。
重いリュックは、火事のときに背負って走れません。家にいるなら、そもそも背負う必要もありません。
そして、3つに分けてみて、いちばん抜けていたのが枕元でした。
枕元にいちばん必要だったのは、靴でした
わが家の枕元にあったものは、この4つです。
- 靴下
- メガネ
- 携帯電話
- 懐中電灯
これで足りていると思っていました。明かりもある。メガネもある。携帯も、手が届くところにあります。
でも、ひとつだけ足りないものがありました。靴です。
靴下では、ガラスの上を歩けません
夜中に大きな地震が来たら、どうなるか。停電で、部屋は真っ暗です。そして床には、割れた窓ガラス、落ちた食器、照明のかけらが散っています。
その上を、靴下で歩く。
まず、切ります。
足を切ってしまったら、そのあとの一週間がまるごと変わります。片づけもできない、水も汲めない、病院はいっぱいで診てもらえない。
玄関の近くに防災リュックを置いていても、そこまでたどり着けなければ、意味がありません。置き場所は正解だったのに、そこへ行く道が抜けていました。
履き古したスニーカーを置きました
防災用の靴を買ったわけではありません。下駄箱にあった履き古したスニーカーを1足、枕元の手の届くところに置いただけです。
捨てようかと思っていた靴です。ここに置くなら、汚れていても、古くても、まったく問題ありません。かかった費用は、0円です。

枕元に置いたのは、この3つ
結局、枕元はこの3つに落ち着きました。
- 靴:履き古したスニーカーでいい。ガラスから足を守る
- 懐中電灯:小さなもので十分。携帯は連絡手段。電池は残しておきたい
- メガネ:普段コンタクトの人ほど必要。見えないと、何も判断できない
携帯電話は、もともと枕元で充電しています。懐中電灯とメガネも、前から置いていました。
新しく買ったものは、ひとつもありません。足したのは、下駄箱にあった靴を1足だけです。
笛は、置きませんでした
防災の本には、枕元に「笛」を置くように書かれています。家具の下敷きになったとき、声よりも遠くまで届くからです。
わが家が置かなかったのは、寝室が2階で、倒れてくる家具もないからです。寝ている場所に倒れてくるものがない。これがいちばん確実な備えでした。
ただ、1階で寝ている方や、寝室にタンス・本棚がある方は、置いたほうがいいと思います。100円ほどで買えて、場所も取りません。
最後に、夫にリュックの場所を聞きました
防災リュックは、昔は備蓄スペースに置いていました。でも物がいっぱいで、いざというときに取り出せない。そう思って、玄関に近い和室へ移しました。まわりに何も置いていない部屋です。
移したのは、私です。何年も前のことでした。では、夫はその場所を知っているのか。聞いてみました。
「防災リュック、どこにあると思う?」
知りませんでした。
考えてみれば、当たり前です。移したことを、夫に伝えていませんでした。
その間ずっと、夫にとって防災リュックは「たしか、家のどこかにあるもの」でした。
先日、家じゅうの置き場所を1枚の紙にまとめて、冷蔵庫に貼りました。その紙に、「防災リュック → 玄関横の和室」と1行足しました。
置き場所を決めても、家族が知らなければ、置いていないのと同じです。
▶ 我が家のトリセツを作ってみた|全部書こうとしたら、1枚の「案内板」で十分だった話
次は、リュックの中身と、家の備蓄です
「逃げるのは火事のときだけ」と決めたので、リュックの中身も入れ替えることになりました。水や食べ物は、持って逃げるものではなく、家で使うものだったからです。
そこで次は、リュックの中身を全部、床に出してみました。残したもの、家に戻したもの、そして捨てたもの。かなり減りました。
よくある質問
避難所と自宅、どちらを選べばいいですか
家が無事なら、自宅にいるほうが楽です。ただし津波・浸水・土砂災害の区域や、1981年より前の古い家なら、迷わず避難所へ。まずハザードマップで、自分の家がどちらかを確かめてください。
防災リュックは、どこに置くのがいいですか
玄関に近く、まわりに物のない場所です。押し入れの奥では、取り出す前に出られなくなります。わが家は玄関横の和室です。
枕元には、何を置けばいいですか
靴・懐中電灯・メガネの3つです。とくに靴。夜中の地震では、床がガラスだらけになります。履き古したもので十分です。今夜、0円でできます。
懐中電灯は、携帯電話のライトではだめですか
代わりにはなりますが、おすすめしません。スマホは連絡のための道具です。停電中の電池を明かりに使うのは、もったいない。100円のライトで十分です。
まとめ
- 防災リュックの中身より先に、「逃げるのか、家にいるのか」を決める
- 決め手は、ハザードマップと家が建った年。わが家は「逃げるのは火事のときだけ」だった
- 備えは枕元・リュック・家の備蓄の3か所。いちばん抜けていたのは枕元の靴で、0円だった
- 置き場所は、家族が知っていて初めて意味がある
防災は、「何を買うか」より先に、「どう動くか」を決めることでした。わが家は「逃げるのは火事のときだけ」と決めたことで、備えがとてもシンプルになりました。
あなたの家は、災害が起きたら逃げますか。それとも、家に残りますか。
その答えが決まると、防災リュックの中身も、置き場所も、きっと変わるはずです。

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